2023年11月19日
「初期むし歯(C0)」は酸によって歯からミネラル(リン酸やカルシウム)が溶け出し、表面内側の密度が低くなった状態です。
分かりやすく言えば、むし歯で歯に穴があく手前の段階です。
歯の表面にツヤがなく、白濁や薄茶色に見えるといった特徴がありますが気づきにくく、痛みもありません。
エナメル質が溶けて穴があき黒く見えるむし歯は、痛みはほとんどありませんが「冷たい飲食物がしみる」「食べ物がひっかかるようになった」などの異変があります。
気がづいて歯科を受診しようと思った時にはむし歯は進行しており、さらに進むと歯の大部分が溶けて激しい痛みを伴うむし歯になってしまいます。
「初期むし歯」は歯を削らずに元に戻すことが可能ですが、進行したむし歯になってしまうと歯を削る治療が必要になります。
この「初期むし歯」の改善に大切なのが「再石灰化」です。
私たちの口内では、歯を溶かす「脱灰」と修復を行う「再石灰化」が繰り返されています。
脱灰とは、むし歯菌が作り出した酸によって、歯の表面のエナメル質からカルシウムやリン酸が溶け出てしまうことです。
それに対し再石灰化とは、脱灰によって溶け出したカルシウムやリン酸が唾液によって再び歯に取り込まれ、歯が元に戻ることです。
つまり、脱灰と再石灰化が同じ程度で繰り返されている間は、健康な歯が保たれます。
ところが、糖質を頻繁に摂取したり、オーラルケアを怠って歯垢が長時間付着しているなど、脱灰が促進されるような口内環境が続くと再石灰化の修復スピードが追いつかず、むし歯へと進行してしまいます。
早い段階で気が付き、脱灰よりも再石灰化が促進されると状況を作れば歯が修復されて元に戻ることができます。
再石灰化の促進にはいくつかの方法があります。
むし歯を作らない進行させないためには、歯垢をしっかり落とすことはもちろん、むし歯菌のエサとなる食べカスを口内に放置しないよう、食後の歯磨きなど日頃からオーラルケアを行って口内環境を整えることが重要なポイントです。
毎食後に歯磨きをすることが理想ですが、外出先などで歯磨きをする時間がない場合、洗口液で口を20〜30秒すすぎ汚れを洗い流す事でも効果があります。
また、歯磨き後に洗口液を使えば磨き残し対策になります。
洗口液には製品によって成分や効果にも違いがあるので、製品の説明書きを読んだり、歯科に相談するとより効果的に使用することができます。
糖質が口内に入ると、むし歯菌がそれらを餌に酸を出します。
普段のお口の中は中性を保っていますが、これらの酸によって酸性に変化し、唾液によって中和されるまでの一定時間は酸性のままになります。
つまり、歯の表面のエナメル質からカルシウムやリン酸が溶け出てしまう脱灰の状態が続きます。
1日の中で食事や完食、甘い飲物を取る機会が多いほど脱灰が進み、歯の修復を行う再石灰化のタイミングを無くしてしまうのです。
これを解決するには、間食・甘い飲物=だらだら食べを止め、3食+おやつ+甘くない飲物=まとめ食べを行うことがカギになります。
特に、歯が生えてきた~小学校入学前のお子さんのを持つ親御さんは、お子さんの歯をよく見てください。
透明感の無い白色の部分、白濁している部分はありませんか?
その白色の部分は脱灰を起こしています。
そのまま進行すればいずれは茶色くなり、穴が空くむし歯に進行してしまします。
お子さんが1日で糖質を口にするタイミングに注意して、まとめ食べを心がけるようにしてください。
近年、様々なオーラルケアグッズが販売されており、その中でも「フッ素」を使用した商品が多くみられるようになりました。
フッ素には、歯面の強化・再石灰化を促進する作用・むし歯菌の酸生成を抑制するといった働きがあります。
フッ素の使用方法は歯磨き剤・直接歯に塗るジェル・洗口液・マウスピースに塗ってくわえるトレー法などがあります。
市販のものはフッ素の配合量が少なく、試しやすい代わりに効果も薄いものです。
歯科では、月に1度クリーニングと併せて専用のフッ素塗布剤を使用し、ホームケア用の歯磨き剤またはジェルとの併用を勧めています。
歯科での検診は、初期むし歯など自分では気づかない変化を早期に見つけるためのものです。
定期的に受診することで、歯を削ったり抜くリスクを無くすことにつながります。
むし歯の対策においてもご自身のお口の状態に合わせた対策が最も効果的ですので、お家で試して効果を実感できない場合や、高い効果を求めたい場合は、遠慮なく当院にご相談ください。